台湾の2012年総統選挙が1月14日おわった。80万票差の689万票(得票率51.6%)で馬英九総統の再任がきまった。私は台北でこの選挙を見届けた。
その夜、敗北した蔡英文氏は選挙総本部のある新北市板橋のスタジアムに集まる数十万人の支援者を前に、力及ばなかったことを詫びた。この季節特有のしのつく雨の中、ぬれそぼった支援者たちはみんな泣いていた。
しかし彼女は顔をまっすぐあげて、最後の演説で主席を引責辞任すると発表した。支援者たちから地鳴りのように「留下来!留下来!(留任してくれ)」と叫び声が上がった。それを抑えるようにこう続けた。
「つらかったら泣いてもいい。でも、落ち込まないで。悲しんでもいい。でも、あきらめないで。なぜなら、明日は起きて、これまでの4年間と同じように勇敢に、希望をもっていかなくてはいけないから。なぜなら、私たちは勇敢に国家の責任を背負っていかなくてはならないから。希望をもって台湾のためにこの地を切り開いていかなくてはならないから。私たちはどんな立場にあっても、この国家が私たちを必要とし続けてくれるかぎり、台湾を愛し、台湾を守るのです。台湾の人々よ、いつかまた、私たちは帰ってきます。あきらめないから。2012年のこの日、民進党を、蔡英文を支持したことに、誇りをもってください。私たちは頭をあげて、勇敢に歩み続けますから。みんなありがとう、私の心は永遠に台湾の人々とともにある!」
日本の選挙で、敗北の政治家がこれほどの演説を行えるだろうか。何十万の支持者が雨の中をぬれねずみになって敗北した政治家を待ち、その戦いを称えるなんて、ありえるだろうか。そう思いながら、聞いていた。
総統選に見る台湾女性の強さ: 福島 香織 日経ビジネスオンライン:2012年1月18日(水)